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【卒業生が語る】高専受験を決める前に親子に読んでほしい話

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「中学生の子供が高専に進学したいと言ってきた。」「知人から子供の進学に高専をオススメされた。」「高専出身はなにやら凄いと言われる。」

高専ってなんだ?

ってひと多いと思います。

文部科学省のデータによれば日本には高専出身者がわずか1%未満しかいません(全国に高校生が一学年110万人いる一方で、高専生はなんと1万人…およそ0.9%)

私もその一人で、かつては高専生でした。

本日は世間にとって謎の世界である「高専」について

  1. 高専ってどんなところなのか
  2. 高専では学生は何をしているのか
  3. メリットもあればデメリットもあるということ
  4. 就職率100%というのはぶっちゃけ本当
  5. 大学編入は簡単に出来ないということ
  6. 学費・寮・その他費用について

以上のような疑問を持った方に対して答えます。

先に書いておきますが、私は高専をオススメするわけでも、やめておけと言いたいわけでもありません

ただ、私が受験した当時に欲しかった情報を書きました。

受験する中学生の人生を大きく左右するのが高専受験です。真剣に情報を求めている方には、こちらも真摯に、誇張も偏見も無しに書かせていただきます(それでも一個人の意見として理解していただけると幸いです)

高専とはそもそもなんなのか

私は高専を卒業後に大学編入し、今年就職しました。

高専生として過ごしていた当時と現在の高専に差はほとんどないので、どうぞご参考にしていただければと思います。

ではまず、「高専」とは。

国立の高等専門学校。偏差値はそこそこ高い

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高専とは、国内に50校ほど存在する「高等専門学校」の通称です。

9割以上は国立ですが、東京高専は都立だし、サレジオ高専は私立と、国立であることが高専たる所以ではありません。

国立高専はどこも偏差値が高く、特に地方国立の高専は偏差値60〜70ほどあり、地元の地方国立大学への編入学もよくある話です。

私が通っていたのは長野高専で、偏差値は65くらいでした。

  • 高専は偏差値が高く、地方では高専というだけで年配者から褒められたり、とりわけ【地元企業への就職】や【地元大学への編入】に強いイメージがあります。

※就職や編入に強い理由はこの後それぞれの項目で解説しています。

5年間のカリキュラムで徹底的に専門知識を詰め込むから強い

高専は、高校でも短大でも専門学校でもありません。

高専を卒業するためには5年間を要しますが、単純に高校3年間+短大2年間を卒業した時とは比べ物にならない知識・技術を得られます。

その理由は国語・社会・芸術などの文系科目を出来るだけ省き、1年生の頃から数学を三角関数まで終わらせて専門科目に手をつける徹底した専門分野の教育にあります。

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全国の高校生が将来ほとんど使わないだろう勉強を行なっている間に、将来エンジニアとして働く前提でそこに必要な知識だけ詰め込む。

  • 学生の頭の良さ以上に、ある意味効率的な勉強で5年間かけるので、企業からしたら大学生より採用したい人材に見えるのは納得できます。

高専生は非常識な人間に育つ危険性も

私個人の意見として書かせていただきます。

高専生はこのような教育で「即戦力」な技術者に育つ反面、技術以外は非常識な部分があります。

働く上ではその「常識的な感性」が必要だったりするので一概に素晴らしい教育とは言えないと思います。

ただ、やはり実践的な知識・技術を身につけるなら大学よりも適した環境であることは間違いありません。

私が編入後に大学で学んだことはほとんど高専ですでに知っていた知識でした。

技術は身につけつつ技術だけの人間にならないように、常識を持った人間になれるような努力はしていかなくてはなりません。

大学の座学では不可能な知識が身につくが、その反面…

大学はほとんどの授業が座学なんですね。高専は実技の授業が多かったので、ここが一番の違いだと思います。

実際に手を動かしてみないと実用的な技術は身につかないと個人的には感じるので、大学の座学も就職してからあまり役に立ってない印象があるので、そういう点では高専に入ってよかったと思います。

しかしその一方で大学では技術の構造や理論を学ぶことができるので、教育としてはどちらも一長一短な部分は否めません。

結論を言えば、どちらも大切です。

卒業すると準学士(短大卒と同じ学歴)

高専を卒業すると学歴としては短大卒と同等の準学士という扱いになります。

しかし高専卒の付加価値がある分、短大卒よりメリットは多いかと思われます。

結局多くの人にとって学歴は就職のためでしかない思うので、高専卒で就職に成功していれば学歴にあまり意味はないように思えますが、学士が欲しい人は大学編入ですね(これも後で解説しています)

とにかく学費が安い。寮もある。

授業料は年間23万ほどで、5年間通って大学に編入したとしてもかなり安いと思います。

寮も食費込みで3万ほどで、経済的にお得という面があります。

就職率100%は本当?(卒業できればね…)

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この記事を読んでいただけているということは、少なからず高専のホームページにアクセスしたことがあるのではないでしょうか?

どこの高専も「高い求人倍率!」とか「就職率100%!」と謳っていますが、まあだいたいは合ってると思います。

本項では高専生の就職について書きます。

「求人倍率は1人につき数十倍」という話は微妙だけど、それでもかなり良いのは事実

私が在学していた当時は「求人倍率が40倍!(一人につき40社が欲しがる)」と広告されていましたが、そんなことないと思います。

とはいえ、私は高専時代に就活してないのであまりテキトーなことは言えませんが、もしかすると超微妙な企業も含めたらそれくらいあるのかも。

大学編入に失敗しても、その後から就活してちゃんと就活できた事例も身近にあります。

Fラン私大にお金かけて卒業するより100倍いい就職先がある

一つ断言できるのは、とりあえず適当に進学したいわゆるFラン大学生には就活で絶対に負けません。

高専から就職した同期はNTT系や電力系、大手グループ企業などにほとんど就職してますし、間違いなく売り手市場です。

工業系やIT系は人材がなによりも重要な業界なので、これからもこの流れはしばらく続くと思います。

でもこれ「卒業できれば」って意味

このように、就職が魅力的な高専。

まず卒業さえしてしまえば路頭に迷うことはないでしょう。

でもこれ、卒業までが大変なんですよ。

次の項で詳しく書きます。

【超重要】受験生は高専を卒業する事がどんなに大変か想像できない

はい、通ってないので当たり前です。

私も受験当時にはそんなこと想像してませんでした。

高専のHPに書いてあるような「普通の高校では味わえない充実した日々」みたいな楽しいことばかりではありません。

もちろん充実した日々というアピール自体は嘘じゃないと思うし、私自身は高専に通えて良かったというのが本音。

ただし、想像以上に大変だということを公式がちゃんと伝えていないのは入学者集めに不利になる事が分かっているからで、それはちょっとズルいです。

そんな高専に代わって卒業生が現実をしっかり伝えます。

留年・退学・休学は珍しくない

失礼ながら、たいていの高校は勉強しなくても卒業できるイメージです。

高専は授業に出てても、テストの点が悪かったりレポートを出し忘れたりしたら留年の可能性が非常に高いです。

  • 例外を除き、ほとんどの高専は毎年「その年の科目を全て取得する(全て必須科目)」ことが進級の条件です。
  • 私の高専では4科目までは再試処置がありました。

毎年のように数人は留年するし、上から留年生は落ちてきます(ちなみに2年連続で留年すると強制的に退学させられます)

私のクラスにも辛くなって休学する人も1人だけいました。

全員がそうではなく、あくまで1割未満の話ではありますが、こういう可能性があることをちゃんと伝えない高専側に問題があります。

もし高専で留年したら

留年が珍しくない分、しても一個下の学年で受け入れてもらえますし、下手に偏差値の低い大学で4年間過ごすことを考えると1年くらい全然ロスではありません。

1年2年のロスをロスだと考えないマインドを親子間で理解してあげる必要があります。

毎日朝から夕方まで授業がある

高専の授業は大学とは異なり、月曜から金曜まで毎日決められた授業をこなさなくてはなりません。

基本的には1回90分の授業が1限〜4限まで。

高校のような時間割に大学のような授業形態で、しかも落としたら留年なので大学より厳しい。

これが高専の特徴だと思ってもらって構わないです。

まあ3限の日もあるので高校より放課後は長いので、このあたりは高校よりイイかも。

高専からの大学編入の実情

私は高専から大学編入を受験し、東京農工大、電気通信大、筑波大などに合格しました。

本項では大学編入について書きます。

大学編入する人は半分未満

「高専卒業後は就職と編入で半々」という話もありますが、やや就職の方が多いと思います。

誰しも実力以上の大学に編入できるわけではないですが、ほとんどは国立大学に編入できます。ここが高専からの編入の一番のメリットです。

就職先も編入先もそれなりに頑張れば悪い結果にはなりません。

成績下位の私が難関国立大に合格できたのは学力試験で成績が問われないから

私は学力試験を5位で高専に入学してきたのですが、全くまじめに勉強してなかったので成績はどんどん下がり、AランクからDランクまで全部とりました。

編入試験は成績も重要だと噂されますがそれは推薦編入であり、学力試験に成績は全く関係ないと確信しています。

東京農工大は知名度ないですが、研究力では全国トップ5に入ったこともあるし、アジアの大学ランキングにも名前があるほどです。

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そんな農工大でも、高専の成績は不問で学力試験が行われます。

倍率は8倍以上でしたが、大体の学生は本気で勉強してこないので実質2倍くらいだと思います。

大学編入を目指すなら、少なくとも4年のはじめくらいには勉強を始めておくのが無難です。

大学編入応援サイトを運営しています

少し宣伝。

大学編入は情報が少なすぎるので、大学編入についてのサイトを運営しています。

主に面接や様々な大学の編入の傾向と対策、過去問解説等です。

よろしくお願いします。

編入は就職で不利になる?なるわけがない、むしろ有利!

「編入は途中から大学に入っているから、就活では実際の学歴より低く見られる」と言ったような根も葉もない噂を見かけますが、企業側からの目線で考えたら絶対にそんなことありませんよね。

確率1%の高専出身に出会ったら、興味を抱かない方が不思議です。

人事に興味を持たれた時点でまず一歩リードで、他の就活生には出来ない話が尽きません。

バイトとかサークル、ボランティアなんて聞き飽きてる面接官にはめちゃくちゃ有利だと思いませんか?

まとめ:高専はこんな人にオススメ

ここまで長々と5,000文字…簡潔にまとめられず申し訳ありませんが、かなり高専の真実を書き残せたと思います。

最後に「結局のところこういう学生が向いてるよ」という学生像を個人的な目線で挙げさせていただきます。

高専に入るべき学生

  1. 専門分野の勉強が好き・続けられる
  2. 中学時代リア充に馴染めなかったオタク
  3. 学費を抑えて就職したい
  4. 大学受験したくない
  5. モテたい女子

高専は個性的な奴らばかりなので、どんな奴でもそれなりに仲良くやれます。というか自分もいつのまにか良くも悪くも個性的に。

また、女子が少ないのと、高専男子が恐ろしくチョロいのでどんなに地味な女子もモテます。

高専に入ったら一生後悔する学生

  1. 部活をがんばりたい
  2. 恋愛をがんばりたい
  3. 専門分野に興味ない
  4. 服装が自由だから入りたい
  5. 夏休みが長くて羨ましい

こういう人は絶対に高校に行った方がいい!高専にいたこういう感じの学生は途中でやめて文転してました。

高専に行くということは、理系で食っていくということ

途中で退学して文系大学を目指さない限り、まず間違いなく理系としての人生が待っています。

これを中学生に決めさせるのは割とハードだと今なら思います。

しっかり親子で話し合って決めていただきたいと思います。

その上で受験するというのなら全力で応援いたします!